夏に池の側や湿地帯へ行くと、茶色のフランクフルトのような形をした面白い植物を見かけたりしませんか。
近くによってみると表面はビロード状で、触ってみるとちょっとふわふわ。
これは、出雲伝説の「因幡の白兎」にも出てくるガマの穂。
ガマの穂と呼ばれる円柱型の穂は、穂状の花、雌花の集まりからなってるようです。
目次
フランクフルトみたいなガマの穂 ガマ(蒲)ってどんな植物?
「ガマ(蒲)」は、ガマ科ガマ属の多年草の抽水植物。
夏になると見かける円柱状の穂は、ガマの穂と呼ばれています。
ガマの特徴
ガマは、北海道から九州の日本各地の沼沢地や水中に生える大型の多年草。
泥底の浅い水中から直立し、草丈は1メートルから2メートルぐらいの高さになります。
生育場所:池沼や河川の水辺、原野の水湿地、水田耕作放棄地。
太い地下茎を泥中に横走して広がり、群生することが多い。
学名:Typha latifolia
別名:御簾草(ミスクサ)
花期:6月~8月。
雌雄同株で、穂状花序の上部に雄花、下方に雌花をつけます。
果実が熟すと赤褐色のガマの穂となり、果穂の上方から白い冠毛をもつ種子が風によって飛散します。
また、ガマは、栄養塩類の除去などの水質浄化に役立っていると言われています。
魚類などの産卵や避難場所としても利用されています。
ガマの花の様子
7月の始めにハス園で見たガマ(蒲)。
ガマは、茎の頂点付近に花穂をつけます。
上部は無数の雄花、下部も同じく無数の雌花。
雄花は成熟すると苞がはずれ、大量の黄色い花粉を飛ばします。
花の終わり。
雄花は枯れ茶色へ、雌花は太くなり色づいていきます。
ガマの穂の様子
7月の半ば、池の水辺で見たガマの穂。
雌花は茶褐色になっています。
この状態は、雌花の柱頭(雌しべの先端)がカラカラに乾いた様子。
内側には透明な小さなタネを一粒ずつつけた実が、ぎっしりと詰まっているそうです。
雄花は落ちて軸だけが残ります。
近くでみるとこんな感じ。
本当に、ちょっと色の濃いフランクフルトみたいですよね。
チョコ色のうまい棒にも似ていませんか?
もっとアップにしてみました。
触ってみると、ちょっとだけふんわりします。
(芯はしっかり硬い)。
ガマの葉
ガマの葉は、ほっそりとしてしなやかな葉です。
ちょっとススキの葉みたいな形です。
長くて丈夫なので、かつてはすだれや筵、ござなどに利用されたそうです。
綿毛がついたガマの様子
「蒲の穂綿(ほわた)」。
ガマの穂は、秋になって成熟するとふわふわと綿毛になります。
穂の端から糸状体が綿のように飛び散ります。
ガマの一本の穂には、約35万個の種子が入っているそうです。
また、ふわふわのガマの綿毛は、その昔、布団の中に詰めても使われてました。
布団=蒲団という漢字は、ガマ(蒲)からきてるそうです。
ヒメガマ
ガマの仲間は、ガマ(蒲)・ヒメガマ(姫蒲)・コガマ(小蒲)があります。
写真は、「ヒメガマ」。
ヒメガマは、穂(ほ)の上の柄(え)の部分緑色の部分があるのが特徴です。
雄花の集まりが雌花から離れてつくため、離れた部分のが緑色になっています。
「コガマ」は、ガマに比べて背丈も小さく、葉も細く穂も細い。
ガマのよもやま話
古事記の「因幡の白兎」では、皮を剥がされて苦しんでいるウサギに大国主命(オオクニヌシノミコト)が「ガマの穂を身体につけなさい。すぐに良くなるよ。」という場面があります。
集めたガマの花のうえに静かに寝転ぶと、すっかり元のしろうさぎに戻りました。
ガマの雄花の花粉は、風によって飛散して受粉しますが、
飛散する前に集めて乾燥させたものは漢方薬としても使われています。
「蒲黄」(ほおう)と呼ばれ、傷やヤケドの傷を治す作用があるそうです。
また、「ガマの穂」は「かまぼこ」の語源だそうです。
当時のかまぼこは、今の形とは違って細い竹にすり身を付けて焼いた食べ物のこと。
これは現在のちくわにあたるそうです。
確かに、ちくわとガマの穂は色と形が似ていますね。
ガマの花言葉は「従順」「素直」です。