ソテツは雌雄異株で、初夏から夏にかけて、幹の頂部に独特な雄花・雌花をつけます。
裸子植物特有の原始的な花で、雄花は円柱形、雌花は多数重なって丸く膨らんでいます。
雌花が受精すると、秋には朱色の実が成ります。
開花が貴重とも言われるソテツの花ですが、九州では所々で見かけますよ。
目次
ソテツ(蘇鉄)の花は面白い! 雄花・雌花・花後や赤い実
ソテツ科ソテツ属に分類される常緑低木。
ソテツの特徴
ソテツ(蘇鉄)は日本の九州、南西諸島、中国南部が原産の裸子植物です。
成長すると1m~4m、稀に8m程に成長します。
幹の先に羽状の長さ0.5m~2mの大きな葉を、輪生状につけます。
ソテツは雌雄異株(しゆういしゅ)で、雌花と雄花が別々の木につきます。
開花時期は6~8月。
雄花は、円柱形で細長く、鱗片がらせん状につきます。
雌花は、褐色の綿毛で覆われ、多数重なってつきます。
名前の由来は、木が弱ったとき、株元へ鉄を打ち込むと元気が戻ったことから「蘇鉄(鉄で蘇生する)」と名付けられました。また、中国でも「鉄樹」という名前で呼ばれています。
科・属名:ソテツ科・ソテツ属
別名:鉄蕉(テッショウ)、鳳尾蕉(ホウビショウ)
開花時期:6~8月
樹高:3~5m※野生種は8mくらいもあり
原産地:日本(九州南端~南西諸島)、中国南部
花言葉:「雄々しい」
ソテツの花(雌花・雄花)
- 雌花は、ドーム状の羽の塊のような形。(直径50cm程)
雌しべを構成するたくさんの大胞子葉(だいほうしよう)が重なっています。
雌花は種子錐(シュシスイ)とも呼ばれます。
- 雄花は、細長い円柱の形。(長さ30~70㎝程)
松ぼっくりを、長く引き伸ばしたようなものとも言われます。
太いトウモロコシのようにも見えます。
雄花は花粉錐(カフンスイ)とも呼ばれます。
ソテツの花後(雌花・雄花)
- 雌花は、雌花が受精すると、長さ4㎝ほどの赤い種子が出来ます。
- 雄花は、花粉を散らした後は、枯れて折れてしまいます。
茶色になり垂れ下がります。
ソテツの雌花の様子
夏に見かけたソテツの雌花。
茎先に頂生している様子がよくわかります。
(葉は切ってあるようです。)
ソテツの雌花は、大胞子葉の集合体。
大胞子葉は淡黄色~淡褐色で、羽状複葉の葉が縮んだような形をしています。
受粉期はゆるく開いた状態。
受粉期を過ぎると再びドーム状に重なります。
大胞子葉は綿毛で覆われています。
上部が羽状で葉に似た形です。
大胞子葉は、雌しべの原初形態だそうです。
9月の半ばに見かけたソテツの雌花。
受粉が終わり、大胞子葉どうしが密着しあいドーム状に重なっています。
10月に見かけたソテツの雌花。
赤い種子が見られます。
ソテツの羽状の雌花の基部は、赤色に膨らんだ胚珠があり、受精すると赤色の種子になります。
10月の終わりに見かけたソテツの雌花。
実が熟してくると、中心部を割り広げて新芽が出てきます。
近づいて覗いて見た様子。
2月の終わりに見かけたソテツの雌花。
たくさんの実が赤く色づいています。
近づいて覗いて見た様子。
果実は橙色~赤色の倒卵形~楕円形で4㎝ほど。
食べられそうなきれいな赤い実ですが、ソテツにはサイカシンという有毒成分が含まれています。食べると体内で分解されホルムアルデヒドを生じ中毒を起こすので注意が必要です。
夏に見かけたソテツの雌株。
茎先には葉が茂り、葉の根元に赤い実がみられます。
ソテツの雄花の様子
6月半ばに見かけたソテツの雄花。
まだ青っぽく、まるびを帯びています。
大きな若い松ぼっくりのようです。
同じく6月の半ばに見かけた雄花。
こちらは細長い。
鱗片(りんぺん)も開いて、淡黄色い先の尖った円柱形。
ソテツの小胞子葉。
松かさの鱗片に当たる部分は、小胞子葉(ショウホウシヨウ)と呼ばれます。
裏側にはびっしりと葯(小胞子のう)があり、たくさんの花粉が作られます。
雄花の花粉は、風に飛ばされ雌花に付着し、その雌花の花粉室で数か月栄養をもらい精子に成長して、その後卵細胞まで泳いで受精するそうです。
9月のおわり見かけたソテツの雄花。
枯れたソテツの雄花は、茶色になり垂れ下がっています。
近くで見ると少しグロテスク。
花後ですが、うろこ状の幹のようです。
枯れた雄花の根元からは、新芽が出始めています。
ソテツの木の根元は、芽を出している種がありました。
発芽しているソテツの種。
ソテツはとにかく育ちの遅い植物と言われます。
大きくなるかな・・・
ソテツは恐竜より古い最古の裸子植物のひとつ、「生きた化石」とも呼ばれます。
独特の風貌で、羽のような葉の緑は冬でもきれいで見応えがあります。
花の様子もとても面白い植物です。