夏の海岸で見かける白いハマユウ(浜木綿)の花。
大型の植物なので、存在感があり目を引きます。
もじゃもじゃっとした細長い白花が、反り返ってる咲いてる様子が、なんとも不思議な雰囲気。
ハマオモト(浜万年青)とも呼ばれています。
ハマユウってどんな植物? 特徴や育て方
「ハマユウ(浜木綿)」は東アジアから南アジアにかけて、温暖な海岸の砂地に生える常緑の大形の多年草。
日本では、房総半島より南の温暖な海浜で多く自生している海浜植物。
庭にもよく植えられています。
ハマユウの特徴
夏になると、緑の肉厚の葉の間からすっと太い花茎を立ち上げて、白くて細長い花を手毬状に咲かせます。
夕方になると花が開花し、真夜中に満開になります。
花は独特の強い香りが漂っています。
名前の由来は、花が木綿(ゆう)のように白く垂れることからつけられました。
木綿(ゆう)というのは、木綿(もめん)ではなく、コウゾの繊維から作った糸のことで、神事のとき榊につけ垂れ下げるもののこと。
大きく肉厚の葉っぱがオモトに似てることから、「浜万年青(ハマオモト)」と呼ばれています。
科・属名: ヒガンバナ科ハマオモト属
学名: Crinum asiaticum
別名: 浜万年青(ハマオモト)
原産地: 日本 韓国
開花時期: 7月~9月
草丈:30cm-80cm
花言葉は、「どこか遠くへ」、「汚れがない」
ハマユウ(浜木綿)の花
太い茎の上部、ひとつの蕾のような形をしてるは総苞です。
苞が破れて垂れ下がると、中から十数個の蕾が現れて開花していきます。
苞が破れて、めくれるように垂れ下がる。
たくさんの蕾たち。
開花した様子。
白く細長い花びらがくるりんとカーブして、可憐な花を咲かせています。
花は直径6~8cmほど。
6枚の花被片の長さは7~8cm、幅5~8mmと細長い。
下部は合着して長さ5~6㎝の筒状。
雄しべ(花糸)は6本。長く花の外に伸び出しています。
花糸の上部は赤紫色になり、葯(やく)がT字状につきます。
雌しべは、葯がついていないもの。
雌しべは1本、花柱は赤紫色の糸状。
葯(やく)は、雄しべの先端にある花粉を入れる袋状。
ハマユウの花が枯れた様子。
花が終わると、小さな玉ねぎみたいな球形の果実が幾つも実ります。(直径3~4cmほど)
8月の終わりには、もう果実が実っていました。
果実の中には、幾つかの種が入っています。
この種は水に浮く種で、海を何ヶ月も生きたまま漂流することが出来るそうです。
海流によって、各地へ運ばれて広がっていったようですよ。
日本では、黒潮の影響を受けて黒潮に直面した沿岸部の砂浜でハマユウが自生しているとのこと。
ハマユウの葉
葉は、肉厚でしっかりしています。
長さ30~70センチ程、幅は10センチ前後で先の方は尖っています。
やや谷折りで縁は波打っています。
ハマユウの育て方
- 【場所】
日当たりがよく水はけが良い場所。(日当たりが悪いと花付きが悪くなる)。
深さ30cmほどの植え穴を掘り、掘り上げた土の三分の一程度の腐葉土を入れ、庭土とよく混ぜ合わせて植えつけます。
鉢植えの場合は、大きめの鉢(8~10号くらい)に一つ植え。
赤玉土(小粒)7:腐葉土3の割合で混ぜ合わせたもの。
- 【水やり】
地植えの場合は、特に必要ありません。
鉢植えの場合は、春~秋にかけての生育期は、土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。冬は控えめにします。(土の表面が乾いて2~3日たってから)
- 【肥料】
葉が伸びる前と花後に有機質肥料を与えます。
- 【増やし方】
株分け(4月頃が適期)
- 【病虫害】
葉や茎が赤くなる赤斑病などが発生することがあります。
害虫の「ハマオモトヨトウ」の食害に注意する。
大きくなりすぎた株は、切り戻しをします。
植え替えは春から秋にします。
ハマユウは、常緑なので花のない時期でも観葉植物として楽しむことができます。
ハマユウの歌
青い海にとても似合うハマユウですが、
万葉集にも柿本人麻呂が詠んだ歌1首が掲載されています。
『み熊野の浦の浜木綿 百重(ももへ)なす 心は思へど ただに逢はぬかも』
緑濃く葉と茎が重なり合い、真っ白い花が重なり合う、そのように厚く幾重にも心で思っているのに、直接逢うことができないという歌です。
当時、人麻呂は朝廷の美しい官女に恋をしていたとも言われていますよ。
情景が目に映るような、ちょっと切ない気持ちの歌ですよね。
南紀熊野地方は、今でもハマユウの自生地として知られています。