ヤブツバキ(藪椿)は、日本を代表する椿の自生種で、青森県から九州にかけての太平洋沿岸に多く分布します。
冬から春にかけて、黄色の蕊をもつ紅色の5弁花を鮮やかに咲かせ、花の少ない季節を彩ります。
ヤブツバキは、たくさんの園芸種のツバキの基になった植物です。
ヤブツバキ(藪椿)の特徴・花の様子
3月、海岸近くの林の中に咲くヤブツバキ。
ヤブツバキ(藪椿)の特徴
日本、台湾、朝鮮半島原産で、ツバキ科ツバキ属の常緑高木。
樹高は5~15m。
樹形は不整形。樹皮は灰白色~灰褐色で平滑。
葉は長さ4~8㎝の長楕円形で先端が尖り、縁には浅い鋸歯(ギザギザ)があります。
葉は厚く硬い革質、表面に光沢があります。
開花時期は10月~4月。
枝先の葉の脇に、直径5~7㎝の花を一輪ずつ咲かせます。
花びらの枚数は5枚。
筒状の花には多数の雄しべがあり、花弁の根元と合着しており、散るときは花の形のまま落ちます。
花後の果実は直径3cmほどの球形で、成熟すると3つに割れて種を落とします。
種子には35%もの油分が含まれ、古くから「椿油」と呼ばれ、化粧用や食用、燈用に用いられてきました。
名前の由来については諸説あり、
葉っぱに、厚みがあるから「あつば木」、つやがあるから「つやば木」、ピカピカ光沢があるから「つや木」などで、いつしか「つばき」と呼ばれるようになったと言われてます。
学名:Camellia japonica
科・属名:ツバキ科・ツバキ属
原産地:本州、四国、九州、沖縄。朝鮮南部
別名:ヤマツバキ、ツバキ
花言葉:「気取らない優美さ」「控えめな美点」
ヤブツバキ(藪椿)の花の様子
花は直径5~7㎝の5弁花。
花弁は平開せず、ややカップ状。
雄しべは多数で、花糸が中間部で合着して筒状になり、その下部はさらに花弁と合わさり、はずれにくい構造になっています。
ツバキの花は、離弁花(りべんか)とされますが、花弁は散らず、合弁花のように咲いたままの形で落ちます。
左、咲いてる花
右、落ちた花後
ツバキは花がおわると、雌しべとガクを残して全体がポトリと落ちます。
雌しべは花の中心部にあり、ふつう柱頭は3裂。
花弁と雄しべがひとつになって落花。
花の進化は離弁から合弁という方向に起こっており、ヤブツバキの花弁は、離弁から合弁になりつつある中間段階かもしれないという話もあります。
花に香りはありませんが、鳥媒花でメジロやヒヨドリが花粉を媒介します。
昆虫が少ない冬にツバキはたくさん花をつけ、鳥たちを誘っているようです。
筒状に並ぶ雄しべは、小鳥がくちばしを入れた時に、花粉がたくさん付着する役割を果たします。
花筒の下部には多量の蜜があります。
横から見た様子。
ヤブツバキ(藪椿)の蕾。
3月下旬に見頃を迎えたヤブツバキ(藪椿)。
よく分枝して茂り、たくさんの花を咲かせてました。
たわわに花をつけてる様子。
辺りは鳥の鳴き声で賑やか。
ポトリと落ちた花。
落下してる花にも風情が漂います。
「落ちざまに 虻(あぶ)を伏せたる 椿かな」と夏目漱石の句があります。
花が伏せたままの状態、ツバキの花はうつ向きに落ちた様子の句ですが、落下したツバキの花は、あおむけのものが目立つ印象です。
樹高が高いほど、あお向きに落ちる比率が大きい、低い樹だと、空中で回転する間がないので、そのままにうつぶせに落ちつくなどとも言われています。
ヤブツバキ(藪椿)の葉・幹の様子
ヤブツバキ(藪椿)の葉は、濃緑色で革質で厚い。
年中ツヤツヤとしています。
(裏面は淡緑色)。
葉身は長楕円形で先端が尖り、周囲には細かなギザギザ(鋸歯)があります。
長さ5~12㎝、幅3~8㎝ほど。
枝から互い違いに生じる互生。
早春の頃になると、新芽が出てきます。
幹は、灰褐色~黄褐色で、触り心地は滑らか。
材は緻密で耐久性が高く、建築、彫刻、器具材として利用されます。
ツゲなどの模擬材としても利用されています。
生木の灰は、山灰とよばれ釉薬や紫染の媒染剤に使われます。