自生するカノコユリ(鹿の子百合) 特徴や様子

自生するカノコユリ(鹿の子百合)
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カノコユリ(鹿の子百合)は、鹿の子絞りのような斑点模様と、くるりと反り返る花形が特徴的。夏の暑い時期に咲く野生ユリで、自生してる様子はとても綺麗です。

シーボルトによってヨーロッパにも紹介され、「もし美しさに置いて最高の物があるとすれば、間違いなくこの花である」と称賛されています。

自生する美しいカノコユリ(鹿の子百合) 特徴や様子・育て方

海岸近くの岸壁に自生するカノコユリ(鹿の子百合)

海岸近くの岸壁に自生するカノコユリ(鹿の子百合)。

カノコユリ(鹿の子百合)の特徴

日本、中国の原産、日本では九州(主に薩摩半島から長崎県沿岸)や四国(愛媛県や徳島県の山間部)に自生しており、自生密度が高いは甑島列島(こしきしまれっとう)とされます。自生地の減少が著しい為、環境省のレッドリストの絶滅危惧種に指定されていますが、昔から観賞用にも栽培もされています。
別名:ドヨウユリ(土用百合)、タナバタユリ(七夕百合)。

草丈は1~1.5mほど。
茎は直立するか、湾曲して伸びます。
葉は互生し、長さ12~18㎝の先が尖った披針形、革質で艶があります。

開花期:7月中旬~8月中旬。
花は茎の上部に総状花序を出し、数個~20個の花が斜め下向きに咲きます。(まれに上向きや横向きに咲くものもあります)。
花径は7cm〜10cm程。
花びら(花被片)は強く反り返り、縁が少し波打ち、 鹿の子絞りのような濃紅色の斑点と乳頭状突起があります。花には芳香があります。
花色は濃紅~ピンク、変種には白花があります。

果実は蒴果で、長さ3cm〜4cm程の長楕円形。
地下の球根(鱗茎)は、径7cm〜10cm程の肉質な扁球形です。
球根は飢饉の祭の救荒食物とされました。
薬用としても、滋養強壮、利尿、咳止め、解熱、消炎の効能があるとされています。

 

名前の由来は、淡いピンクの花びらに広がる無数の斑点。その模様が染の技法、かのこ絞りに似ていることから。

 

学名:Lilium speciosum
科・属名:ユリ科・ユリ属
原産地:日本 中国 台湾
別名:ドヨウユリ(土用百合)、タナバタユリ(七夕百合)
花言葉:「荘厳」「上品」「慈悲深さ」

 

 

自生するカノコユリ(鹿の子百合)の様子

海岸近くの岸壁、傾斜地に咲くカノコユリ(鹿の子百合)の群生

海岸近くの岸壁、傾斜地に咲くカノコユリ(鹿の子百合)。
見上げなければ、素通りしてしまいそうな場所に群生していました。
斜面等から垂れ下がるように茎を伸ばし、たくさんの花をつけています。

カノコユリがよく育っているところは、半日陰で傾斜地、地際に日が当たらないように、背の低い草等が生えているような場所だそうです。

草むらに生えてるカノコユリ

写真をアップにしてみました。
野趣あふれる様子、草むらに生えています。

崖に咲くカノコユリ(鹿の子百合)

崖に咲くカノコユリ(鹿の子百合)。

カノコユリ(鹿の子百合)の花、アップ写真

カノコユリ(鹿の子百合)は、お化粧したかのように、花びらに広がる無数の赤い斑点、くるりと反り返る花形が特徴。

下を向いてくるり、花先を外に巻き込むカノコユリの花

下を向いてくるり、花先を外に巻き込み咲いています。

カノコユリの花、正面から見た様子

ユリの花被は、6つの花被片から構成されています。
外側3枚、内側3枚でそれぞれ外花被片、内花被片と呼ばれています。

雄しべは6本で、隣同士互い違いに外側3本、内側3本に分かれています。
雄しべの先は、ぶら下がるように赤褐色の葯(花粉を入れる袋)がT字状につきます。
雌しべは1本。柱頭が3つに分かれています。

カノコユリの花、花弁のアップ写真

花びらには、紅色に斑点と、つぶつぶとした乳頭状の突起があります。
これは「乳頭状突起」と呼ばれる組織で、蜜を求めてやってくる虫を蜜腺へと誘導する蜜標の役割を担ってるようです。

カノコユリの花のアップ写真、花弁の基部には長い突起

花弁の基部には長い突起。

カノコユリの花、雄しべの先端につく細長い楕円形葯(やく)

雄しべの先端につく細長い楕円形葯(やく)。
パプリカパウダーの様な赤い花粉がびっしりついています。

手についてしまったカノコユリの花粉

知らない間に手についてしまったカノコユリの花粉。

ユリの花粉は、脂質類のため粘着力が強く、ベタベタとしています。
皮膚や衣服などに花粉が付くと大変取れにくいので注意が必要です。

花粉は、水をはじく蝶の羽のような物にもしっかりつき、羽に付いた花粉は、羽ばたくたびに雌しべにつき受粉へと。

カノコユリの蕾

カノコユリの蕾。

カノコユリの色づく蕾

色づく蕾。

カノコユリ、枯れ始めた花

枯れ始めた花。

花後の果実は6稜のある長楕円形の蒴果。
上向きにつき、裂開すると翼のある種子が風で飛びます。

カノコユリの葉

カノコユリの葉。

葉の付き方は互生。
卵状披針形で長さ12~18㎝。
革質で艶があります。

 

カノコユリ(鹿の子百合)の育て方

カノコユリ

カノコユリは、ユリの中では比較的ウイルス病に耐性があり、性質も丈夫で育てやすいユリとされます。

球根の植え付け時期は、10月~11月頃。
球根の約2倍程度の深さに植え付けます。

植えられたところの環境条件が良ければ、毎年7月中旬から、8月上旬にかけて花が咲き、球根がだんだん大きくなり、花数も増えていきます。
条件が悪いと、植えたときよりも球根が小さくなって、2~3年で球根が無くなってしまう場合があります。

  • 栽培環境
    水はけの良い土壌。
    午前中は陽があたるが午後は日陰になるような半日陰の場所が適します。
  • 水やり
    庭植えの場合は、長期間乾燥が続かない限り、特別な水やりはいりません。
    鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、たっぷり水やりをします。
  • 肥料
    開花前の4月頃と、花後のお礼肥として、緩効性化成肥料を球根や茎に当たらないように、株元に少量与えます。
  • 増やし方
    株分け(木子)、実生、鱗片挿し。
  • 植え替え
    10月が適期。
    茎葉が枯れてから、球根を掘り上げます。
    ユリの球根は乾燥に弱いため、掘り上げたらすぐに植え替えます。

 

花が咲き終わった後の花がらは、子房の下から手で折り取ります。
種子から育てる場合、開花までに長期間を要し、4~5年ほどでやっと開花するようです。


 

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