キツネノカミソリ(狐の剃刀)は、8月前後に咲くヒガンバナ科の多年草球根植物です。
山里から少し離れた明るい林が生育場所で、山の中で見かける花姿はとても素敵で、心が洗われる美しさです。
葉のない状態で、地面から花茎を伸ばし、オレンジ色のユリのような形をした花を咲かせます。
目次
キツネノカミソリ(狐の剃刀)の特徴や様子
山のなか、沢近くに群生している「キツネノカミソリ」。
キツネノカミソリ(狐の剃刀)の特徴
キツネノカミソリ(狐の剃刀 )は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。
本州、四国、九州、朝鮮半島に分布しています。
雑木林の縁や、やや薄暗い林の湿った土壌の林床に群生します。
ヒガンバナと同じように、花の時期と葉の時期がずれて重ならないのも特徴です。
葉は早春の寒い時期に芽を吹き、やや幅が広い線形の狭長の葉を球根から直接出し茂らせ、夏頃には一旦葉を落とします。
開花時期:8月~9月頃。
花は、葉が枯れた後に花茎を伸ばし、オレンジ色の漏斗形をした六弁花を3~5輪、散形状につけます。
花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)です。
キツネノカミソリの名の由来は、葉の形をかみそりの刃に見立て、花の色をキツネの被毛、または口から吐き出す狐火に見立てたようです。
※ キツネノカミソリはヒガンバナと同じように、全草特に球根に毒性が強く含まれています。毒性の成分は、アルカロイドのリコリン、ガランタミンなどです。
誤食すると嘔吐や下痢、けいれんなどの症状を引き起こすので、注意が必要です。
科・属名:ヒガンバナ科・ヒガンバナ属
原産地:日本、朝鮮半島
別名:キツネバナ、ソウレバナ、ジャランポングサ、ジゴクバナ、リコリス・サンギネア
草丈:30cm~50cm
開花期:8月~9月
花言葉:「妖艶」
キツネノカミソリ(狐の剃刀)の様子
夏の山に咲くオレンジ色の美しい花。
キツネノカミソリは、花茎を上部で3~5本に枝分かれさせながら30~50cmに立ち上げ、花を茎先に散形状に付けます。
開花時期には、葉は枯れて無くなり、直立した茎に花がついている見た目です。
「炎のような花がいきなり現れる」。この花を狐火に見立てたとも・・・
花は長さ約6cm、直径4cmほど。
花冠は漏斗型。橙色の6弁花。
花びら(花被片)は、内側に3枚、外側に3枚で構成されます。
花序基部に総苞片があります。
雄しべは6本で、先で上向きに反り返ります。
雌しべは1本。
雄しべは花被片とほぼ同じ長さで、葯は淡黄色。
開花した花と蕾の様子。
キツネノカミソリは、ひとつの茎から3~5個の花をつけます。
蕾の様子。
苞葉の中から小花柄を出します。
横から見た様子。
斜め上に咲く花。
上から見た様子。
花は散形状についています。。
花軸の先端から、放射状に花柄が伸びています。
オオキツネノカミソリ(大狐の剃刀)
オオキツネノカミソリは、キツネノカミソリの変種とされ、ほぼ同様の性質を持ちあわせています。
名前にあるようにキツネノカミソリより花が大きく、長く突き出るおしべが特徴的です。
日本では本州の関東以南と九州に分布し、落葉林内に生えます。
キツネノカミソリより標高の高い場所に自生するようです。
キツネノカミソリ(狐の剃刀)とオオキツネノカミソリ(大狐の剃刀)の違い・見分け方
- 花期の違い
オオキツネノカミソリの花期は、キツネノカミソリより早く、7月中旬から咲きだします。 - 花の大きさの違い
オオキツネノカミソリは、キツネノカミソリより花が大きいです。
(キツネノカミソリの花被片の長さは6cm前後ですが、オオキツネノカミソリはは9cmほど。) - 見た目の違い
キツネノカミソリの雄しべ・雌しべは、花被片とほぼ同長ですが、オオキツネノカミソリの雄しべ・雌しべは、花より超出し、花被片は反り返りが強くでます。
またよく似た花に、対馬・長崎・宮崎のごく限られた地域で見られる「ムジナノカミソリ(狢の剃刀)」があります。
環境省カテゴリでは、 野生絶滅種に選定されてる植物です。
長崎県レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危機が増大している種)に選定。
ムジナノカミソリの花は、オオキツネノカミソリに似ていますが、花序は小さめで長さ5~6cmほどです。
花弁はオオキツネノカミソリと同じく反ります。
雄しべはオオキツネほど長く花被片から飛び出さず、少し外に飛び出る程度です。
ムジナノカミソリの名前は、キツネノカミソリに酷似していることからで、キツネ同様に人を化かすとされるムジナ(アナグマ)の名が付いたそうです。