ヤマアジサイは一般的なアジサイに比べ、花や葉が小さく茎も細くしなやかです。
繊細で楚々としている中にも野性味があり、より自然な魅力があるアジサイです。
可憐な花は一重咲きから八重咲があり、花色も繊細で豊富です。
小ぶりな樹形なので、鉢植えや草もの盆栽にも向いています。
目次
ヤマアジサイ(山紫陽花)の特徴・品種
「ヤマアジサイ(山紫陽花)」は、アジサイ科アジサイ属の落葉性花木。
主に太平洋側の福島県から四国や九州にかけて日本中に広く分布しています。
主に山中に自生することが多く、特に半日陰の湿り気のある沢沿いの生息するため、別名「サワアジサイ」という名前で呼ばれることもあります。
ヤマアジサイの特徴
全体的にアジサイに比べて小型で枝が細く華奢な印象です。
葉は薄くやや小さめ。
花はガクアジサイと同じように多くはガク咲きですが、半テマリやテマリ咲きのもあります。
ガクアジサイよりも花序が小型なので、コガクと呼ばれることもあります。
花色は白、青、ピンク、赤、紫など。
花姿は、一重咲きと、複数の花弁が重なる八重咲きがあります。
野趣に富んだ樹形で、花色や花形は地域による変異が多くあるようです。
またヤマアジサイは、開花期間中に色の変化があるものがあります。
土の性質によって花色が鮮やかに変化するものは、土が酸性だと青色、中性~アルカリ性だとピンク色に変化すると言われています。
寒くなると落葉して越冬し、春に再び芽吹きます。
科・属名:アジサイ科 ・ アジサイ属(ハイドランジア属)
原産地:日本
別名:サワアジサイ、コガク
花言葉:「乙女の愛」「切実な愛」
紅(クレナイ)
「紅(クレナイ)」は、咲き始めの花色は白ですが、咲き進むと紅色になる美しいヤマアジサイ。
時間をかけてほんのりと色づいていくので、色の移り変わりが楽しみです。
天竜川上流の静岡県・長野県境で発見された品種。
満開時は鮮やかな赤花をつける珍しいヤマアジサイです。
太陽の光により、白から赤に変わると言われます。
多少日が当たる場所で育てた方が、花色が鮮やかに赤くなるそうです。
(土壌により色は変わりません)。
乙女の舞(オトメノマイ)
「乙女の舞(オトメノマイ)」は、乙女の名にふさわしい可愛いピンク色のヤマアジサイ。
装飾花が剣弁で、八重咲になる品種です。
別名:木沢の光(キザワノヒカリ)。
徳島県旧木沢村で採取された品種。
細長いピンクのガク片が重なり合っているので、華奢ですが華やかな雰囲気です。
花色は土質に影響されます。
土の酸度によっては、ピンク色ではなく紫が入った色になります。
青甘茶(アオアマチャ)
「アオアマチャ(青甘茶)」は、両性花が青色、4枚の装飾花にはにうっすらと青みがかかっています。
紫色〜紅色の花をつける「アマチャ」に比べ、葉が大きくて丈も高くなるようです。
アマチャはヤマアジサイの変種とされている品種です。
丸みのある装飾花がシンプルで可愛らしいです。
一般的にアジサイは葉には毒が含まれているため、お茶にしたり食用にすることはできませんが、アマチャは葉を乾燥、発酵させて煎じるとお茶ができます。
「甘茶」と書くように甘いのが特徴で、甘味料としても用いられます。
アマチャには色んな種類があり、オオアマチャ(大甘茶)、アマギアマチャ(天城甘茶)、シロアマチャ(白甘茶)、ヤエアマチャ(八重甘茶)などがあります。
白富士(シロフジ)
「白富士(シロフジ)」は、白い剣弁の八重花を咲かせるヤマアジサイ。
純白の八重咲き品種です。
花は装飾花のみで、中央の両性花がない珍しいヤマアジサイです。
静岡県愛鷹山産。
装飾花ははじめ縁がかり、咲き進むにつれて純白になります。
葉も青々として形もすっきりしています。
七変化(シチヘンゲ)
「七変化(シチヘンゲ)」は、基本的には青色ですが、土の酸度によって色が変わりやすいので、シチヘンゲと呼ばれるようです。
この種ではなく、「アジサイ」のことを別名として、七変化と呼ぶこともあります。
装飾花は一重で、ヤマアジサイらしい楚々とした雰囲気があります。
両性花はふんわりと集まっていて、開花すると長いしべが目立つようになります。
九州で発見された品種。
葉の形はやや細長い形をしています。
枝も細くて繊細な印象ですが、しなやかさがあります。
また「七変化(シチヘンゲ)」とよく似ているヤマアジサイに「藍姫 (アイヒメ)」があります。
藍姫 (アイヒメ)
「藍姫 (アイヒメ)」は、藍色が素敵なヤマアジサイ。
剣弁一重の額縁咲き。
ヤマアジサイの中でも株は小さめの品種ですが、花は大きめです。
一重咲きの青い装飾花と、こんもりとした両性花のコントラストが魅力的です。
「藍姫」、「七変化」は、同一のものとする説と、異なる品種とする説があるようです。
七変化は九州産ですが、藍姫は徳島県剣山系産のアジサイとあります。
藍姫は、花付きが良い品種とされ人気があります。
似た花を咲かせる品種に「黒姫」もあります。
黒姫は、新軸が黒いことからついた命名のようです。
紅剣(ベニツルギ)
「紅剣(ベニツルギ)」は、薄いピンクの花びらが可憐なヤマアジサイ。
一重の額縁咲き。
装飾花は薄いピンク色で、外側がやや濃くなってほんのり彩ります。
両性花は白色ですが、花粉が出る前の雄しべは淡い水色です。
徳島県剣山系産のアジサイです。
花も葉も小型の品種です。
祖谷てまり(イテヤテマリ)
「祖谷てまり(イテヤテマリ)」は、半テマリ咲きと呼ばれる形状の白いヤマアジサイ。
ガク咲きとテマリ咲きのちょうど中間のような咲き方です。
真ん中に両性花が残ります。
花色は装飾花、両性花とも白色。
徳島県南西部の祖谷渓(いやだに)原産。
純白で清楚な色合いです。
咲き進むと装飾花が両性花を覆い隠すように広がり、装飾花の隙間から両性花が見え隠れします。
清澄沢(キヨスミサワアジサイ)
「キヨスミサワアジサイ(清澄沢)」は、白い装飾花の縁に紅色の覆輪が入る美しいヤマアジサイ。
江戸時代からの古品種。
紅色の縁取りは、よく出る場合と出ない場合があるそうです。
大型になるヤマアジサイです。
性質が健丈なため、園芸品種の母種にされることが多いそうです。
千葉県の清澄山原産。
タフスタッフ
「タフスタッフ」は、見た目はガクアジサイのように見えるヤマアジサイ。
半八重から八重の額縁咲き。
米国で改良された二季咲性ヤマアジサイです。
装飾花は濃いピンク~藤色の丸弁で華やかさがあります。
花色は、土の酸度によって変わります。
一般的なヤマアジサイと比べるとかなり大型です。
樹形はアーチ型に自然にまとまります。
返り咲きがあるので、長く楽しめる品種です。
新旧両枝咲きです。
姉妹品種に、小柄でコンパクトなタイプの「タイニータフスタッフ」があります。