オオバヤシャブシ（大葉夜叉五倍子）の実は、大きさは２〜３㎝程、見た目は小さな松ぼっくりのようです。
染料としても使われる実ですが、リースやスワッグ、オブジェの素材にも活躍できそうな可愛い実です。
初夏の枝先には、花後の青々とした卵型の若い実と、昨年からついてるゴツゴツとした黒褐色の松笠状の実が一緒にみられますよ。
オオバヤシャブシの実 特徴や様子
初夏に見かけるオオバヤシャブシの実の様子。
オオバヤシャブシの特徴
オオバヤシャブシは、日本固有種のカバノキ科 ハンノキ属の落葉小高木。
福島県から和歌山県までの太平洋岸に分布しますが、空中窒素の固定能力があるので、治山や肥料木として用いられた結果、温暖な地方では広く植栽されています。
樹高は5～10mほど。
樹皮は灰褐色で、円形の皮目が多く見られます。
葉は互生し、 葉身は先のとがった長さ6～12㎝の長楕円形で、 鋭い重鋸歯があります。
花期は3月～4月（春）。
雄花と雌花が別々に咲く単性花。
果穂は長さ4～5センチの広楕円形の松笠状で、 10～11月に熟します。
実にはタンニンが多く含まれ、煮詰めた液は黒の染料として使われます。
名前の由来は、大きな葉をもつヤシャブシの意味。
ヤシャブシ（夜叉五倍子）は、果穂のぼこぼこした感じを、ヤシャ（夜叉）、（インド神話にある鬼神の名前）に喩えたとされ、フシ（付子）は、ヌルデの木の葉にできる虫こぶのことで、同じように染料として使うことから、名前がついています。
学名：Alnus sieboldiana
科・属名：カバノキ科 ハンノキ属
原産地：日本
別名：ハゲシバリ
オオバヤシャブシの花
オオバヤシャブシの花は、３〜４月に葉の展開と共に咲き始めます。
雌雄同株（しゆうどうしゅ）の雌雄異花（しゆういか）。
ひとつの枝に、雄花と雌花が別々につきます。
雌花序は、 雄花序と枝先の新芽の間に数個上向きにつきます。
雄花序は、黄色味を帯び、長さ4～6㎝程の穂状で、芋虫のような形で垂れ下がります。
雌花序は、赤味を帯び、長さ２㎝程の楕円形で、斜め上を向いて咲きます。
雄花から花粉が風にのって運ばれます。
オオバヤシャブシの実
紫陽花が見頃の初夏になると、葉は茂り、たくさんの緑の実が枝いっぱいになります。
花序がそのまま松ボックリ状の果穂になっています。
多くの実が密に集まった多花果。
オオバヤシャブシの実は、10〜11月に成熟します。
今年の果穂と昨年の果穂が一緒にみられました。
オオバヤシャブシの果穂は、種を落としたあとも長く枝にとどまります。
果穂の鱗片(苞)は、木質化し翌年にも残ります。
松ぼっくりと同じように、扇形で黒褐色の果鱗で覆われオオバヤシャブシの実。
果鱗の間には、両側に狭い翼のついた狭長楕円形の堅果が入っており、風で遠くに飛ばされます。
美しい形。
触ると固い。
木元には、枝についたまま風で落とされたオオバヤシャブシの実や、干からびたオオバヤシャブシの雄花が落ちてます。
手のひらに乗せるとこの位の大きさ。
オオバヤシャブシの葉は互生し、長さ6～12㎝の下がふくれたような形の三角状卵形。
先端は鋭く尖り、縁には細かいギザギザ（鋸歯・のこぎりば）があります。
幹は、灰褐色で割れ目が目立ちます。
若い木は滑らかですが、樹齢を重ねるにつれて大きく剥離します。
オオバヤシャブシの樹形は、枝振りが乱れがち。
剪定を嫌う木でもあり、樹形が整いにくい木といわれます。
根には「根粒菌（こんりゅうきん）」と呼ばれる菌が存在しており、菌は空気中の窒素を固定変換し、樹木全体に届ける役目を果たしています。
そのため痩せ地でも育つ性質があり、
荒れ地や造成されたばかりの場所で、すばやく成長することからパイオニアツリー(=開拓の木）とも呼ばれます。
